2024.12.10

tonari 

【アップサイクルプロジェクト「tonari」】軽やかに長く続ける──伊織らしいサステナブルな商品づくりとは


“よりよい暮らしにつながるタオルづくり”を目指して、2009年に立ち上がった伊織。ブランド発足以来、15年間で1,000万枚もの今治タオルをお客様のもとへお届けしてきました。

5社のタオル工場との取り組みから始まったこのブランドも、現在では20社ほどの工場とのお取引をし、全国7店舗、2,000商品を扱うほどに拡大。

少しずつ生産量や店舗数が増えた一方、規格外品(B品)や製造過程で発生する残糸など、“つくり手としての責任”を感じる場面も増えていきました。

「環境問題を解決する」といった壮大なビジョンではなくとも、「まずは自分たちができることからはじめよう」と発足したのが『tonari(トナリ)』プロジェクトです。

今回はプロジェクト発足の背景と、伊織らしいサステナブルな商品づくりについてお伝えします。

生まれた規格外品を「そのまま捨てたくない」という素直な想い

2016年7月、tonariの前身となる『RIORI(リオリ)』の発足から伊織らしいサステナブルな取り組みの形を探す旅がはじまりました。

もちろん環境配慮に対する世の中的な機運が活動の後押しになったことも事実です。

でもそれ以上に、生産工程で生まれた規格外品に触れたときに感じた「そのまま捨てたくない」という想いが、伊織がサステナブルに向き合う一番の原動力になっています。

規格外品のほとんどが、ほんの少しのキズで商品にできなかったもの。きれいな部分を活用しすることで再生プロダクトをつくれないか──

そこで誕生したのが、リストバンドやペットボトルカバー、鍋つかみ、アイマスクなど、タオルの特性を活かせる商品群(RIORI)です。規格外品から切り出しているので、柄や生地がそれぞれ異なる“一点もの”としても楽しめる商品となりました。※現在は販売終了となっています

お客様に心から喜んでもらえて、そして環境にもやさしいもの

2020年に訪れたコロナ禍による停滞期間は、私たちの存在意義をあらためて見つめ直す時間になりました。そこで生まれたのが「残糸でつくったハンカチ」です。

タオルの生産では途中で織機が止まることがないように必ず必要量よりも糸を少し多めに用意しているため、織るたびにどうしても半端な量の糸(残糸)が発生します。残糸を使った商品は世の中にたくさんありますが、さまざまな色の糸が混在したカラフルなものが一般的でした。

そこで伊織では、2つの糸色を組み合わせて織り上げることで、カラーバリエーションを楽しんでもらえるアイテムに昇華。単に残糸を活用するだけではなく、あくまでお客様に喜んで手に取ってもらえるように付加価値を生むことが伊織らしいものづくりだと考えています。

2023年に発売したタオルとバスマットでも「暮らしに馴染むデザイン」を目指して、後染め(織り上げた後にさらに染め直すこと)を採用しました。追加工程が加わることで手間が非常にかかりますが、その分 大人っぽく印象的な縞柄になっています。

▲染める前のカラフルな残糸タオルと、それを後染めしてtonariタオルとしたもの。日常に違和感なく取り入れられるだけでなく、むしろ商品ごとの色味の違いを一期一会で楽しんでもらえるタオルになりました。

お客様に残糸が生まれてしまう生産背景を押し付けることなく、あくまでほしい商品を手に取るなかでサステナブルな取り組みに参加してもらう。お客様にとっても無理のない環境問題への関わり方を商品づくりを通して生み出しています。

地域を超えたコラボレーションでサステナブルと向き合う

サステナブルな取り組みを広げるなかで思わぬ良い反響がありました。

それは、同じようなコンセプトで取り組んでいる企業からのお声がけです。商品の取り扱い希望もあれば、なかには「一緒に何かつくれないか」というご相談も。

伊織としても、共創によるものづくりを通して今治タオルをより広く届けていきたい。加えて、産地を超えた取り組みによって、それぞれの地域に新しい発見や気づきをもたらし、地域の産業を次世代にもつないでいくという意味でのサステナブルも必要だと考えました。

コラボレーション事例

奈良県の靴下ブランド『SOUKI』とコラボレーションしたタオルソックスです。タオル地の特徴とSOUKIが得意とするローゲージソックスが上手く掛け合わさり、履き心地のよい靴下になりました。

現在、伊織は新しいサステナブルな商品づくりに取り組んでいます。それが、伊予かすりを活用した商品づくりです。

伊予かすりは約200年前に誕生し、明治37年(1904年)に生産量日本一に輝くなど“日本三大かすり”の1つとして親しまれてきました。その後 和装の衰退などに伴って製造所は減り続け、現在では白方興業の1軒を残すのみとなっています。

歴史と文化を持つ伊予かすりを次世代にも繋いでいくため、伊織のほかにも福山デニムを扱う篠原テキスタイルなど地域を超えた新しい商品開発プロジェクトが進んでいます。

「難しいからやらない」ではなく「できることから」

伊織がtonariプロジェクトを通して実現したいことは、ものづくりの責任を果たすこと。それは、非常に難しいことです。だからといってやらないのではなく、まずはできることから取り組むことが第一歩だと考えています。

tonariという言葉には、自分たちだけでなく隣にも目を向けることで見えてくるさまざまな気付きや問題に対して前向きに取り組んでいくこと、加えて、いつも隣にある愛用品のようなものづくりを目指すという2つの想いが込められています。

まずはお客様に喜んで選んでもらえて、そして環境にもやさしい。

無理せず軽やかに、でもずっと続けられるサステナブルな取り組みの形を伊織ではこれからも模索していきます。