【伊織の歩み】“あるもの磨き”で今治タオルの魅力を引き出すブランドづくり

1. 「お客様の声に応えたい」その一心ではじまったブランド作り
伊織誕生の物語は、代表の村上雄二が地元の愛媛県を離れ、東京で銀行員として働くなかで、あらためて故郷の魅力に気づいたことからはじまります。
村上は学生時代の友人に誘われ、銀行を退職して愛媛にUターンします。戻った愛媛で最初に取り組んだのは、愛媛を代表する観光地である道後エリアでのホテル事業でした。
当時は少しずつ今治タオルの存在が全国的にも知られるようになったタイミング。ホテルに宿泊されたお客様から「松山で今治タオルを買える場所はないのか?」という声を耳にすることに。
「それなら自分たちで届けよう」と決意し、2009年に伊織が誕生しました。

最初は5〜6社の今治タオルの工場と提携。さまざまな商品を取り揃えたタオルの専門店に加えて、ホテルでのタオルレンタルサービスをスタートします。
当時は「誰がお土産にタオルを買うんだ?」といった懐疑的な声もありました。
そんななかで、実際に商品を手に取ったお客様からはたくさんの好評の声をいただくことに。特にふわふわとした手触り、先染めジャガード織りの美しさは多くの女性に支持されました。こうした一つひとつの声が、ブランド作りへの自信につながりました。
店舗はセレクトショップからスタートしましたが、観光客にさらに愛媛らしさを感じてもらおうと銘菓の坊っちゃん団子や柑橘の柄など、お土産にぴったりなオリジナル商品の開発にも着手していきます。最初は「こんなタオルがほしい」と期待してくれるお客様の声に応えたい、という純粋な想いからでした。



ブランド立ち上げ当初、ものづくりの経験もまだまだ浅いなかでもタオルづくりに一緒に取り組んでくれる工場の方々の支えもあり、伊織はお客様の声に一つずつ応えながら、たくさんの商品を取り扱えるブランドに成長していきました。
2. “あるもの磨き”で、今治タオルをより魅力的な産品に
伊織は愛媛県内では道後温泉の商店街や松山城ロープウェイ街に店舗を構えています。
私たちにとって、店舗は「単なる商品販売の場」ではありません。“文化を伝える発信拠点”として捉え、日本中・世界中から訪れるお客様に、愛媛のものづくりの魅力を知っていただく機会につなげたいと考えています。
店舗では、観光で訪れた方にも今治タオルの魅力をしっかりと感じてもらえるよう、タオルを一面に並べた「タオルバー」を設置。まるでショールームのように、実際に見て触れて体感できる空間づくりを行っています。

リニューアルも経ながら、タオルのみならず愛媛の魅力を知ってもらえる場とすることで、お客様にとって“選ぶ楽しさ”や“発見する喜び”を感じていただける場所を目指しています。
また、全国各地の店舗でも立地や客層に合わせた特色を持たせ、興味を引き立てる工夫も重ねています。たとえば、東京のKITTE丸の内店では日本をテーマにした限定商品(切手モチーフなど)を展開するなど、場所ごとに異なる表情を持たせています。


富士山と桜をあしらった切手風のネームタグだけでなく、伝統工芸である美濃和紙からつくられた和紙糸(白糸)を使用し、より日本らしさが伝わる商品に。
こうした店舗作りをするのは、私たちのものづくりの姿勢ともつながっています。
私たちが大切にしているのは、「あるもの磨き」という考え方。東京などの都市部にあって地方にないものを求めるのではなく、自分たちが住む地方にある文化や技術など、古きよきものを見つめ直し、新たな付加価値を加えて届けていく——そんな姿勢で、今治タオルと日々向き合っています。
3. これからの伊織
お客様からの声に一つひとつ応えていきながら、伊織は今治タオル取扱専門店としても成長を続けています。地道にお客様から声に応えた商品・店舗づくりを繰り返した結果、立ち上げから15年間で1,000万枚※の販売実績にも至りました。
※2009年12月~2023年8月までの店舗・オンラインショップ販売実績の合算
一方で2020年に訪れたコロナ禍以降、生産量の減少などタオル産地への影響も見られるようになりました。

私たちは産地が次世代にも続いていけるように、良質な今治タオルを各地へしっかり届けていけるようにブランドづくりにこれからも取り組んでいきます。
その取り組みの一つが、海外展開です。
2018年には台湾・台北市に出店するなど、日本のタオル文化の海外への発信に新たにチャレンジしています。日本のタオル文化が、世界で新たな価値として受け入れられつつあることは、私たちにとって大きな手応えでした。また、出店を通して海外のタオル文化に触れて学ぶことも伊織にとっても新しい気づきとなっています。